コンセプトメイキング 変化の時代の発想法
元・博報堂製作部長である高橋宣行さんの著書『コンセプトメイキング 変化の時代の発想法』を拝読しました。
本書(コンセプトメイキング)は、企業のブランディングや商品開発の根幹となる「コンセプト」の作り方を実例とともに紹介しているマーケティングとブランディングの指南書です。
帯に「すごい企画とすごい結果を出すためのコンセプトのつくり方」と書かれているのですが、その言葉に偽りなし、というのが率直な感想です。
本書(コンセプトメイキング)に出会った経緯
はじめはキャッチコピーとライティングに関する本を求めて書店へ足を運んだのですが、目的の本と同じ棚に高橋宣行さんの著書が並んでいました。
自由に本の中身を見てから選べるタイプの書店でしたので、一通り目を通してから「これだ」と思う一冊を選び、それが本書、『コンセプトメイキング 変化の時代の発想法』でした。
ちなみに、その際に購入候補となっていた高橋宣行さんの著書は次の通りです。
高橋宣行の発想ノート
高橋宣行の発想フロー
企画書は手描き1枚
Kindle版
単行本(ソフトカバー)
キーメッセージの作り方
Kindle版
単行本(ソフトカバー)
オリジナル・ワーキング
これらの書籍の中から『コンセプトメイキング 変化の時代の発想法』を選んだ理由は、これらの書籍に共通する概念の根幹となる内容だと感じたからです。
コンセプトメイキングの「原理・原則」はかなり心に響いたキーワード
本書の裏側の帯に、本書の概要が書かれているのですが、その中にこのような記述があります。
やっかいなことに「コンセプト」づくり自体、とてもクリエイティブな作業です。
ロジックを組み立てるだけでは創れません。
そこで、あらためてこの発想法の、原理・原則とコツを「コンセプトメイキング」として、まとめてみました。
この世の全てには必ず原理・原則があり、キモをおさえれば全ての事象においてブレることなく判断を下すことができるという理念です。
最終的に「『コンセプトメイキング』が高橋宣行さんの概念の根幹を著した一冊だ」と確信したのは、この記述が大きかったと思います。
島田紳助さんと共通する概念
中身に目を通して「原理・原則の記述に偽りなし」と確信したのは、『コンセプトメイキング』の中で高橋宣行さんが提唱しているコンセプトの基本型が、元お笑い芸人で事業家でもある島田紳助さんが『紳竜の研究 [DVD]』や『自己プロデュース力 (ヨシモトブックス) 』の中で語っていた『XとYの公式の確立』と共通するものであることを発見したときでした。
そして、島田紳助さんの『XとYの公式』からさらに一歩踏み込んでビジネス面に対して具体的な活用方法が示されており、今後のWILDWEST-SERVICEでのプランニングのバイブルとなることは間違いありません。
86もの豊富なコンセプトメイキング事例を掲載
『コンセプトメイキング 変化の時代の発想法』には、豊富なコンセプトメイキングの事例が掲載されています。
企業コンセプトの事例
企業コンセプトとは、『企業の新しい方向づけを内側からしっかり支え、共通の目指す方向を示す全体的な指針となり、事業、組織、活動、コミュニケーション、姿勢、すべての企業活動の要因を包み込むコアの考え方』です。
これは「企業理念」のように一貫して変わらないものではなく、時代の状況に合わせて定義されます。
次のような企業のコンセプト事例が紹介されています。
- 富士ゼロックス
- 西部百貨店
- IBM
- リッツ・カールトン・ホテル
この他にも、上記と併せて21事例が掲載されています。
マーケティングコンセプトの事例
マーケティングコンセプトとは、『企業経営にあたって必要とされる市場に対する考え方、もしくはアプローチの仕方で、全組織的に持つべきもの』です。
次のようなマーケティングのコンセプト事例が紹介されています。
- 資生堂「TSUBAKI」
- トヨタ自動車「ECO-PROJECT」
- ライオン「植物物語」
- アサヒビール「スーパードライ」
- 良品計画「無印良品」
商品コンセプトの事例
商品コンセプトとは、『あくまでも顧客サイドから見た商品価値で、新たな視点で独創的に提案すること』です。
次のような商品のコンセプト事例が紹介されています。
- ソニー「ハンディカム」
- 富士フィルム「写ルンです」
- ヤマト運輸「宅急便」
- アスクル
- 京王プラザホテル「男性宿泊プラン」
この他にも、上記と併せて25事例が掲載されています。
施設コンセプトの事例
施設コンセプトとは、『社会や人間との関わりの中で、どう存在価値を出せるか。そして、どこまで持続できる価値観を持つか。新しい暮らしの提案』です。
次のような施設のコンセプト事例が紹介されています。
- 金沢21世紀美術館
- キッザニア
- 東京駅ナカ「グランスタ」
- アップルストア
- ラスベガス
ラスベガスは施設と呼んでいいんでしょうか?
ともかく、この他にも上記と併せて9事例が掲載されています。
広告コンセプトの事例
広告コンセプトとは、『広告制作をするときに、商品がどのような特徴を持ち、それが広告の受けてにとって、どのような魅力になるのか、表現アイディアの素となる考え方』です。
次のような広告のコンセプト事例が紹介されています。
- サントリー リザーブ「国産品と呼ばずに国際品と呼んでください」
- 西部百貨店「女の時代」
- SEIKO「なぜ、時計も着替えないの」
- VOLVO「私たちの製品は、公害と、騒音と、廃棄物を生み出しています」
- 本田技研工業 ステップワゴン「こどもといっしょに どこいこう」
- 日産自動車「変わらなきゃ」
この他にも、上記と併せて9事例が掲載されています。
その他のコンセプト事例
その他にも、「名作広告コンセプト」「博報堂企業コンセプト」「私のコンセプトワーク」として、17事例が掲載されています。
これらを「その他」としてまとめてご紹介している理由は、先の5種類の事例の派生系であると考えたからです。
Web製作の現場の日常はコンセプトメイキングの連続だ
高橋宣行さんが本書のあとがきの中で「毎日の仕事の中でコンセプトメイキングする機会の多いことには驚かされます」と語っておられますが、僕もWILDWEST-SERVICEのようなWeb製作の現場では日常的にコンセプトメイキングの必要があると感じます。
コンセプトが定まると、ブレインストーミングしたアイデアに対する判断基準を設定しやすくなりますし、「その企業らしさ」「その商品らしさ」といったものを明確かつ簡潔に定義することができます。
前述しましたが、本当に今後のWILDWEST-SERVICEでのプランニングのバイブルとなることは間違いありません。皆さんにもぜひご一読いただきたい一冊です。