デザインという言葉の定義 ~ポール・ランドの授業に学ぶ~

2011年 06月 16日

はてなブックマークはてブ
Google+1Google+
PocketPocket
デザインという言葉の定義 ~ポール・ランドの授業に学ぶ~

    ポール・ランド(Paul Rand)について

    デザインという言葉の定義 ~ポール・ランドの授業に学ぶ~

    ポール・ランドはアメリカの有名なデザイナーです。
    IBMやabcテレビなど、多くの有名企業のコーポレートアイデンティティ(ロゴマーク)やポスターを手がけ、スティーブ・ジョブズも彼を「最も偉大なグラフィック・デザイナー」と絶賛しています。

    ポール・ランドのデザインに対する哲学や理論は完璧で、イェール大学でデザインを教えていた教育者でもあります。

    今回は20世紀を代表するデザイナーであり、優れた教育者でもあったポール・ランドによる「デザインとは何か」の定義についての記事です。

    デザインとはいったい何か

    デザインとはいったい何か

    「デザインって一体なにをすることなのか」という問題。デザインという言葉の定義を求める問題です。

    デザインを教える現場では、恐らく最初にデザインの定義から入ると思います。

    私自身もデザインを教える場合にはまず最初にデザインという言葉を定義するところから始めます。
    他にHTMLやCSSを教える場合にも、まず「HTMLとは何か」「CSSとは何だ」というそれぞれを定義する部分から教え始めますが、きっかけはポール・ランドによる「デザインの定義」に深く感銘を受けたためです。

    生徒さんたちにこの問題を投げかけてみると、様々な答えが返ってきます。
    「文字や画像の色と配置を決めること」、「メッセージを表現すること」、「キレイに飾ること」、「デザインとは道具だ」。

    どれも間違いではないのですが、残念ながら正解でもありません。

    正解を知っている人はあまりいない

    よく専門学校なんかで教えている答えのひとつが「デザインとは設計である」という答え。
    実はこれも正解ではないんです。ただ単にデザインという言葉の言い方を変えただけ。

    だってそうでしょう。ぼくが生徒さんに「さあ君たち設計したまえ!」なんて言って生徒さんに何ができるというのでしょう。
    「具体的に何をすればいいんですか」という質問が返ってきて「文字や画像の色と配置を決めること」、「メッセージを表現すること」といった答えで返すのが目に見えています。

    でも前述の通りその答えは正解ではないんですよね。

    さて、それじゃあデザインって一体なんなんでしょう。一体なにをすることが「デザインをする」ということになるのでしょうか。

    デザインは関係である

    デザインは関係である

    前述の問題「デザインという言葉の定義」に対するポール・ランドの答えは非常に美しく完璧です。

    「デザインとは関係である。形と中身との関係だ。」

    先ほど出てきた配色と配置・メッセージ・道具・設計といった答えをもっと掘り下げていくと、このポール・ランドの答えに辿り着きます。
    つまり、それらの枝葉に派生していく根幹の部分が「関係」ということ。「形と中身との関係をつくる」ということなのです。

    一般にデザインとはネクタイの柄や、服の胸元のリボンや、スワールの飾り罫のことだと思われていますが、それらは装飾であってデザインではないのです。

    つまり……どういうこと?

    「デザインとは関係だ!」なんて、これだけ聞いてもピンとこない人が大多数です。
    ですから私はいつも必ずその後にごく簡単な実演を踏まえて説明します。今回も同様に実演を踏まえて説明していきましょう。

    まず、ここにあるのは六角形です。これだけでは何の意味もありません。ただ幾何学的な形状が描いてあるだけです。

    ただの六角形

    こちらは円です。これも同様に何の意味もありません。ただ円があるだけです。

    ただの円

    これらを組み合わせて、六角形の中心に円を置いてみます。こうするとただの六角形とただの円が、ナットを描いたものになります。
    これがデザインです。これが関係です。形である六角形と円の関係が中身であるナットとの関係を作り出すのです。

    ナット

    続いてはこちら。これはただ単に文字を書いただけです。しかし人の顔に見えますよね。
    (この例を授業で出すとかなりウケます。デザインを教えている先生たちのツカミにオススメ)

    へのへのもへ

    このように、形状・配置・色などの関係を作ることで単なる形や記号が意味をもち、中身との関係が生まれるのです。

    枝葉ではなく根幹の部分こそが正解だ

    こうして見てみると、前述の答えがなぜ「間違いではないが正解でもない」のかが分かるでしょう。

    まず「文字や画像の色と配置を決めること」ですが、これはその人がやることを言っているだけなのであって、デザインという言葉そのものの定義ではありません。

    「メッセージを表現すること」というのは正解に近いですが、具体的にどう表現するのかという部分まで掘り下げていません。

    「道具」というのも、何のための道具なのか分かりませんし、「キレイに飾ること」は何をもってキレイだと判断するのか分かりません。

    これらの答えは「デザイン」というものを構成している要素の1つ1つで、枝葉の部分なんです。
    それらをひっくるめて何と言うのか。すべての答えに共通している部分は何なのか。

    それが正解になる答えであり、何かを定義するための方法なんです。

    ポール・ランド、デザインの授業

    今回ご紹介したようなポール・ランドのデザインに関する理論・哲学が集まっている本がポール・ランド、デザインの授業という本です。

    ポール・ランドが教鞭をとっていたイェール大学の同僚との会談や実際の講義の様子などが収録されており、デザイン概論の素地を身に付けるには最適な一冊です。

    薄くてサイズも小さいので、カバンに忍ばせたりして持ち運びも負担が少ないですから、時間があるときに何度も読み返してみることをおすすめします。

    カテゴリ:デザイン
    タグ:

    この記事をシェアする

    はてなブックマークはてブ
    Google+1Google+
    PocketPocket

    この記事へのコメント

    このサイトをシェア

    このサイトをシェアするボタンです。

    各記事ごとのシェアは各記事のタイトルの下のボタンから。

    SNSのアカウントのページへのリンクは画面最下部のフッター内にあります。